リハーサルスタジオ設計・工事
リハーサルスタジオ設計・工事
リハーサルスタジオの設計・工事を行う際の検討ポイントについて、まとめています。
リハーサルスタジオは、プロユース・一般のバンド練習・楽器練習等の用途がありますが、いずれにしても、防音と音響の両方から、検討する必要があります。
こちらのページでは、リハーサルスタジオの概要と設計・工事の検討ポイントについて、ご紹介致します。
リハーサルスタジオの概要
リハーサルスタジオは、室内で出す音が隣接する部屋や隣戸へ騒音にならないようにすること、隣室や屋外からの騒音が練習に支障ないようなレベルにすることが重要です。
また、外部からの騒音対策や複数のリハーサルスタジオが隣接する場合、各スタジオ同士での防音工事が、必要不可欠となります。
音響面に於いては、プロのミュージシャンから一般ユーザーまで、ステージでの演奏に違和感が無いような音響調整が必要です。
下記にリハーサルスタジオの設計・工事で、検討が必要なポイントについて、各項目ごとにご説明致します。
リハーサルスタジオ設計・工事の検討ポイント
防音設計の目標値
リハーサルスタジオの防音性能は、D値という遮音性能の等級で評価されます。
リハーサルスタジオでロックやポップスのような大きな音を出した場合は、必要となるD値が2ランクほどずれて大きくなります。
これにより、隣室の使用条件によって必要な防音性能は変わりますが、Dr-65~Dr-75程度が目標値となります。
リハーサルスタジオの防音・防振構造
単一部材の遮音性能は、入射音の周波数と材料の面密度の対数に比例します。(質量則)
つまり、材料の重量が増えると遮音性能があがります。
しかし、質量則では、重量を2倍(同一材なら厚みを2倍)にしても6dBしか遮音量は増加しません。
この質量則以上の遮音量を得るには、部材間に空気層をとった二重壁を構成することにより可能となります。
また、この部材間の振動伝達を抑えることによりさらに防音性能が向上します。
したがって、リハーサルスタジオのような高度な防音性能が必要な場合は、防振設計が必要不可欠となります。
音には、空気を伝播してくる「空気伝播音」と、壁・床・天井等の物体内を伝播する「固体伝播音」があります。
固体伝播音は、その物体が振動することで音が伝播するので、壁などを厚くするだけでなく、防振構造(浮遮音層)が必要となります。
特に色々なテナントが入る複合ビル等で、リハーサルスタジオを計画する際は、床に伝播する振動に対して、防振構造が必要不可欠となります。
苦情の発生しているリハーサルスタジオでは防振構造が無い、または十分でないことが非常に多いため注意が必要です。
リハーサルスタジオの防振設計・工事
防振材の種類は、防振ゴム・金属スプリング・エアーサスペンション等様々ですが、リハーサルスタジオの防音工事に使用される防振材は、ほとんど防振ゴムです。
一般的には円筒型防振ゴムですが、最近ではリングマウント・ボールダンパーのような質の高い防振材が主流になっています。
ゴム・ポリウレタン系の防振パッド・シート・フォーム材に組込まれているタイプは、簡易防振材なので、性能を追及する防音工事には不向きです。
防振材の選定
- 固有振動数Foを10Hz程度に設定
- 固有振動数Foでの共振レベルが低いもの
- 防振材の減衰特性
防振ゴムの設定は、防振したい周波数の1/3の周波数に固有振動数(f0)を設定します。
10Hzに設定すると、30Hzぐらいから防振性能が発揮されます。
ゴムやポリウレタン系の防振パッド・シート、フォーム材に組込まれているタイプでは、10Hz程度に設定できませんので使用できません。
固有振動数Foでは、振動レベルは増幅されます。
このレベルが高い防振材では、リハーサルスタジオなどの建築の防振材としては不向きです。
通常の防振ゴムでは10~15dBですが、15~25dBと非常に大きな防振材もあり注意が必要です。
この周波数付近でのレベルが増幅し、外部からの低い周波数の振動に弱く、上部での人の動きの揺れに問題が生じることもあります。
内部摩擦抵抗が少なく、共振点の増幅が大きく、なかなか減衰しない防振材は、バネ自体の縦振動による共鳴現象(サージング現象)を起こすため可聴域の防振効果が悪くなります。
*床の振動による共振音がマイクロフォンに入り問題が生じる可能性がある為、内部摩擦抵抗が適度である防振ゴムの選定が必要です。
以上が、リハーサルスタジオの設計・工事で、検討が必要なポイントについてのご説明です。
リハーサルスタジオの設計・工事には、高度な専門知識と技術力が求められます。
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