無響室の構造と設計について

無響室の構造と設計の基本的な考え方

無響室の構造と設計の基本的な考え方、弊社の無響室の実績について、ご紹介しています。

無響室とは、室内での音の反響を無視できるほど小さく設計した音響実験室のことです。

無響室の主な用途しては、

  • スピーカーやマイクロホン等の音響測定。
  • 産業機械から発生する騒音の測定。
  • 人間の聴力の精密測定。
  • 音の立体感覚の測定。

などの多くの目的に使用されています。

無響室の設計・施工には、高度な専門知識と技術力が求められます。

無響室を検討する際は、施工実績が豊富な技術力のある音響業者へ、ご相談することをお勧め致します。


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無響室の構造と設計

無響室の構造と設計など、技術的な考え方について、各項目ごとにご紹介致します。

無響室の防音設計

無響室は、外部・隣戸からの騒音対策が必要不可欠となります。

設計目標とする無響室内暗騒音レベルは、測定する音源の最小レベルより、-10dBが理想です。

防音構造は、騒音レベルを測定あるいは予測して、この目標とする無響室内暗騒音レベルより、遮音レベルを計算して設計します。

無響室の防音構造

単一部材の遮音性能は、入射音の周波数と材料の面密度の対数に比例します。(質量則)

つまり、材料の重量が増えると遮音性能があがります。

しかし、質量則では重量を2倍(同一材なら厚みを2倍)にしても、6dBしか遮音量は増加しません。

質量則による遮音量の計算

垂直入射;TL0=20log10f・m-42.5

拡散入射;TL=TL0-10log10f(0.23・TL0)

・f[Hz];入射音の周波数

・材料の面密度;m[kg/㎡]

・m=ρ×t ρ;密度[kg/m^3]、t;厚さ[m]

*この質量則以上の遮音量を得るには、部材間に空気層をとった二重壁を構成することにより可能となります。

また、この部材間の振動伝達を抑えることによりさらに防音性能が向上します。

無響室のような高度な防音性能が必要な場合は、防振設計が必要不可欠となります。

*無響室の防音構造

無響室の防音構造

無響室の防振設計・防振工事

音には、空気を伝播してくる「空気伝播音」と、壁・床・天井等の物体内を伝播する「固体伝播音」があります。

固体伝播音は、その物体が振動することで音が伝播するので、壁などを厚くするだけでなく、防振構造(浮遮音層)が必要となります。

特に無響室のような高度な防音が必要な場合は、防振構造が必要不可欠です。

また、地下鉄や地上の鉄道・周辺道路の振動などの影響がある場合も、防振対策が必要となります。

無響室の防音工事に使用される防振材については、多くの場合は防振ゴムになります。

一般的には円筒型防振ゴムですが、最近ではリングマウント・ボールダンパーのような質の高い防振材が主流になっています。

ゴム・ポリウレタン系の防振パッド・シート・フォーム材に組込まれているタイプは、簡易防振材なので、性能を追及する無響室の防振・防音工事には不向きです。

防振材の選び方

  1. 固有振動数Foを10Hz以下に設定
  2. 防振ゴムの設定は、防振したい周波数の1/3の周波数に固有振動数(f0)を設定します。

    10Hzに設定すると、30Hzぐらいから防振性能が発揮されます。

    ゴムやポリウレタン系の防振パッド・シート、フォーム材に組込まれているタイプでは、10Hz程度に設定できませんので使用できません。

  3. 固有振動数Foでの共振レベルが低いもの
  4. 固有振動数Foでは、振動レベルは増幅されます。

    このレベルが高い防振材では、アフレコルームなどの建築の防振材としては不向きです。

    通常の防振ゴムでは10~15dBですが、15~25dBと非常に大きな防振材もあり注意が必要です。

    この周波数付近でのレベルが増幅し、外部からの低い周波数の振動に弱く、上部で測定する機械の動きの揺れに問題が生じることもあります。

  5. 防振材の減衰特性
  6. 内部摩擦抵抗が少なくて、共振点の増幅が大きく、減衰しにくい防振材は、バネ自体の縦振動による共鳴現象(サージング現象)を起こす為、可聴域の防振効果が悪くなります。

    *床の振動による共振音がマイクロフォンに入り問題が生じる可能性がある為、内部摩擦抵抗が適度である防振ゴムの選定が必要です。

無響室の室内音響設計

無響室の室内音響性能は、逆二乗特性の成立距離により決まります。

逆二乗特性とは、室内の反射音が無い理想的な空間(自由音場)において、点音源から放射された音の音圧レベルが、倍距離ごとに6dBの割合で減衰していく特性です。

しかし、実際には完全な自由音場とはならない為、音源からの距離が遠くなると逆二乗特性が成立しなくなります。

逆二乗成立距離が成立する距離が、長いほど無響室の性能が良いということになり、この逆二乗成立距離で無響室が評価されます。

無響室の性能は、逆二乗特性成立距離の長さを測定し評価されます。

ISOでは、この逆二乗特性の許容偏差を下記の表のように設定しています。

無響室では、部屋中央に音源を置き、半無響室では半空間放射を想定して、部屋中央の床に音源を置き測定します。

*逆二乗特性成立距離の許容偏差

無響室1

無響室と半無響室の違い

測定する対象物が大型の機械や車両の場合は、床面を吸音することが難しい為、半無響室とする場合があります。

また、その他にも、予算や建築的な条件等で、床に吸音ユニットを敷き並べ、無響室として使えるようにする場合もあります。

半無響室の場合は、無響室に比べ、測定精度が落ちますので、可能な限り無響室にすることをお勧めいたします。

予算の関係で、吸音構造に吸音楔を使用していない簡易無響室もありますが、測定精度が落ちますので、見積検討段階で注意が必要です。


以上が、無響室の構造や設計の基本的な考え方等、技術的な基礎知識についてのご説明です。

無響室・半無響室の設計・施工には、高度な専門知識と技術力が求められます。

無響室の導入を検討する際は、施工実績が豊富な技術力のある音響業者へ、見積・設計・工事依頼しましょう。

弊社には、国内外で、設計・施工実績のある技術者がおりますので、無響室・半無響室をご検討の際は、お気軽にお問合せください。


無響室・半無響室の主な実績と参加プロジェクト

  • 東芝富士工場恒温恒湿無響室
  • 東芝川崎工場半無響室
  • 日本ケミコン恒温恒湿無響室
  • 富山大学電波・音響無響室
  • ハザマ技術研究所電波・音響半無響室
  • 日立製作所(旧トキコ㈱)半無響室
  • 明星電気無響室
  • ブリジストン技術センター無響室
  • 東京電機秦野工場無響室
  • サンボイス無響室
  • アルバック茅ヶ崎工場半無響室
  • ミネベア電波・音響半無響室(袋井)
  • アイワ本社無響室
  • 松下精工藤沢工場恒温恒湿無響室
  • クラリオン電波・音響半無響室
  • 山水電機無響室
  • 日本ビクタータイ工場無響室
  • 日本ビクター横浜工場無響室改修

当サイト「プロ音響ドットコム」では、実績・経験が豊富な音響技術者が、お客様のご要望に合わせて、提案・設計・施工を行っています。

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